苦しい。


青磁のことは諦めたいのに、諦められない。

嫌いになりたいのに、なれない。

彼と過ごした、あのきらきらした日々を忘れたいのに、忘れられない。


深く刺さっていつまでも抜けない棘のように、青磁のことを思うたびに胸がずきずきと痛んで、決して忘れられない。


そんなある日のことだった。

終礼の最後に、先生が私と青磁の名前を呼んで、職員室に来るようにと言った。


なんの呼び出しかと驚いて、俯けていた顔をあげたけれど、そのときにはすでに先生は教室を出てしまっていた。


「青磁、呼び出しくらってやんの。一体なにしたんだよ?」


男子のひとりが青磁の肩に腕を乗せてからかうように声をかけるのが目に入る。


「あー? べつになんもしてねえし」

「うっそだー、なんもしてないのに呼び出されるわけないじゃん」

「知らねえし……まあ、とりあえず行ってくるわ」


青磁がだるそうにポケットに手を突っ込みながら歩き出す。

鉢合わせないように、彼が廊下に出てしばらく経ってから私も教室を出た。


廊下の奥のほうに、肩をすくめて寒そうに歩く青磁の姿がある。

一定の距離を保ちながら、その後を追う。


べつに悪いことをしているわけでもないのに決まりが悪くて、足音を立てないように、彼に気配を悟られないように歩く。