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その晩、青磁の携帯に電話をかけた。
彼からメールの返信が来なかったことで、すっかり自信喪失してしまって、それ以降はメールさえ送れずにいたけれど、
このまま連絡もせずに彼の安否ばかりを思い悩んでいても意味がないと思ったのだ。
でも、たぶん出てくれないだろうな、と予想していた。
なのに、意外にも、三コール目で通話がつながったので、コール音が途切れた瞬間に驚いて「えっ?」と声をあげてしまった。
『……なんだよ?』
青磁の声が、鼓膜を揺らす。
あまりの懐かしさに、喉が震えるのを自覚した。
「あ……久しぶり」
かすれた声で言うと、無言の数秒があって、小さな声で『ああ』と返ってきた。
青磁の様子がおかしい、とすぐに気づいた。
いつもの声じゃない。
いつもの口調じゃない。
ひどく素っ気なくて、電話がかかってきたことを迷惑に思っているようだった。
「ごめん……今、忙しかった? あとでかけ直すね。何時ごろなら……」
『別に、忙しいわけじゃない』
私の言葉を遮るように青磁が言った。
「え……?」
『……なあ、茜』
とても重大な宣言をするような声音で青磁が私の名前を呼んだ瞬間、電話を切ってしまいたくなった。
今から告げられる言葉は、きっと、私が聞きたくない言葉だ。
でも、通話終了のボタンを押す前に、耳を塞ぐ前に、青磁が冷ややかな声で私を突き刺した。
『――もう二度とお前とは話したくない』