「でも、特別な存在なんです」


気がついたら、そう口にしていた。

先生が突然の宣言に驚いたように目を瞬かせる。


「青磁は私にとって特別な人で、すごく大事なんです。だから、こんなに休みが続くと心配です」


言葉が一気に溢れて、口から飛び出していく。


「心配なんです。青磁はどうしたんですか? 法事とかなら、みんなに言いますよね。言わないってことは違うんですよね。じゃあ、どうして休んでるんですか? ただの風邪ではないですよね?」


興奮しているせいか、マスク越しの呼吸が苦しくてしかたがない。

ぜえぜえと喘いでいると、先生が困惑した表情を浮かべた。


「……丹羽、ちょっと落ち着け」

「嫌です」


私はぶんぶんと首を横に振る。


「ねえ先生、なにか知ってるんでしょ? 教えてください。青磁は今、どこでどうしてるんですか?」


懇願するように言うと、先生は困ったように眉をひそめた。


「……すまん、丹羽。個人情報だからな、先生から言うわけにはいかないんだよ」


全身が脱力しそうだった。

ただ純粋に青磁のことを心配しているだけなのに、個人情報だから、欠席の理由さえ教えてもらえないのだ。

つまり、私と青磁はそれほどに希薄な関係だということだ。


「ごめんな。あいつがお前に言わないってことは、お前に知られたくないってことだろうから、先生からは言えないよ」

「……分かりました」


先生だって、立場上、生徒に言ってはいけないと決められているのだろう。

これ以上問い詰めても困らせるだけだ。