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翌朝。
地下鉄の駅から地上へ出た途端に、切れそうなほど冷たい風が容赦なく吹きつけてきた。
あまりの寒さに震えがくる。
まだ十二月だというのにこんなに寒いなんて、一月になったらどうなるんだろう。
コートの襟をきっちりと合わせてマフラーを何重にも巻き、肩を縮めて早足で学校へ向かう。
今冬いちばんの冷え込み、と今朝のテレビニュースで言っていた。
先週までは景色にもまだ秋らしさが残っていたけれど、今はすっかり冬だ。
どんよりとした薄暗い空に、枯葉が積もった道、走り過ぎていく車が吐き出す白い排気ガス。
冬の景色には冬の景色の良さがあるけれど、寒さのせいでゆっくりと眺める気にもなれない。
早く学校に行こう。
そして、青磁と沙耶香に謝ろう。
一晩ゆっくりと考えて、やっぱりそうするべきだと思った。
マスクのことは外せないのだから仕方がないとはいえ、私が彼らに嫌な思いをさせたのは確かだ。
どうやって声をかけよう、どんな顔をすればいいのだろう。
昨日から何度も考えたことをまた繰り返しぐるぐる悩みながら、無心に足を動かすうちに、気がついたら校門をくぐっていた。
生徒玄関で上履きに履き替えて、冷気の立ち昇るような廊下を歩いていく。
教室に入る直前、緊張のあまり足が震えているのに気がついたけれど、甘えたくなる心に鞭打って、意を決してドアを開け、中に入った。