私の言葉を、青磁は険しい表情で聞いていた。


窓から射し込む光に浮かび上がるその姿は、それでも目を奪われるほど綺麗で、しかめられた顔も端正に整っていて、

それに対する複雑な感情を抑えきれない。


中身も外見も地味で平凡な私に対して、どちらも非凡で周囲から際立つ青磁。

才能に溢れていて、それを自他ともに認めていて、その瞳はいつだってきらきら輝いている。


眩しくて、羨ましい。

そんな彼に、自分の恥部を知られるのは苦しい。


「……青磁には……絶対わからないよ」


かすれた声でくりかえすと、青磁が舌打ちをした。


「お前、また自分だけ悲劇のヒロイン気取りか」


苛立ちを隠さない口調。

ずきりと胸が痛む。


「自分だけが悩んでて苦しくて恵まれない、なんて思い上がりもいいとこだぞ。お前こそ、俺のことなんか分かってないだろうが」


予想外の言葉に、私はちらりと目をあげた。


青磁が険しい表情のまま外を見る。

冬らしい薄ぼんやりとした淡い青空。


「俺が……どんな気持ちで空を見てるか、どんな気持ちで絵を描いてるのか、……お前には分からないだろ」


そんなの、分かってる。

どうせ、楽しくて仕方がないんでしょ。

自分がやりたいことをやれて、思い通りに描けて、思う存分に才能を発揮して。

楽しくて仕方がないって気持ちで毎日描いてるんでしょ。

それは隣で見ていれば分かる。


「……私と青磁は違う。青磁には私の気持ちは一生分からない。だから、もう、ほっといて!」


吐き捨てるようにそう言って、私は青磁を押し退けて美術室を飛び出した。