苦しい。

息ができない。

胸が痛い。


人をかきわけるようにして俯いて歩きながら、私の顔は苦痛に歪んでいた。


昼休みのごちゃごちゃとした校内。

廊下や教室を埋め尽くす生徒たち。

なにも悩みごとなんてなさそうなあっけらかんとした顔で笑っている。


見たくない。

でも、どこに行っても人がいて、私の息苦しさは増すばかりだった。


どこか、誰もいない場所へ。

少しでも楽になれる場所へ。


そのことばかりを考えて、気がついたら旧館に来ていた。


小走りに廊下を駆けて、美術室に飛び込む。

力任せにドアを閉めると、一気に全身の力が抜けた。


閉めたばかりのドアに背中をつけて、ずるずると床にへたりこむ。


膝に顔を埋ずめて、荒れた呼吸を整えるために大きく肩で息をする。

それでも息苦しさはなかなか去ってくれなかった。


両手で顔を覆って、ただひたすらに耐える。

荒ぶった感情の波が引くのを待つ。


目の奥がずきずきと痛んで、喉が引き絞られるように痛んで、頭も痛んで、

自分の身体なのに、捨ててしまいたいほどだった。


目頭が熱くなって、涙が滲み出はじめたのを自覚する。


ふ、と息を吐くと、嗚咽のような震えた声が唇から洩れて、泣きそうになっている自分に嫌気が差した。