「そう……かな?」

「うん、そう思うよ。青磁にとって、茜は特別なんだと思う」


まさか、と思ったけれど、沙耶香の表情はいつになく真剣だったので、本気で言っているのだと分かった。


「でも、青磁がどう考えてるのかはよく分からないな。茜と付き合いたいとか思ってるのか、読めない」


うん、と私は小さく頷く。


「分からないね。あいつ、変人だもん」


そう呟いたら、沙耶香が小さく噴き出して「変人だもんね」とおかしそうに言った。


「ああいうミステリアス男子と付き合うには、どうすればいいんだろうねえ」


ペットボトルのふたを開けながら沙耶香がため息とともに言った。


「付き合う、っていうと、なんか、どうなんだろう……」


と私は独り言のように呟く。


「私もよく分からないんだよね。青磁と付き合いたいのかって訊かれると、よく分からない」


それが私の正直な気持ちだった。

でも、沙耶香は驚いたように目を丸くする。


「え、そうなの? 付き合いたくないの?」

「いや、付き合いたくないっていうか……。私、今まで誰とも付き合ったことないから、イメージ湧かないんだよね」

「そうなんだ、彼氏いたことないの? 意外。もてそうなのに」

「いや、もてないよ全然。それに、今まではなんか自分のことで一杯いっぱいで、恋愛とか興味なかったんだよね。彼氏が欲しいとかも思ったことないし」

「そっかあ。だよね、茜って勉強すごく頑張ってるもんね。恋愛どころじゃないよね」