沙耶香が美味しそうにお弁当のおかずを食べながら、「で?」と声をかけてきた。


「青磁とは、実際のところ、どんな感じなの?」


そういう話題になることはもちろん分かっていたので、私は箸を置いて口を開いた。


「みんなは私たちのこと、付き合ってるって思ってるみたいだけど、違うよ」

「そうなの? よく一緒にいるし、てっきりもう付き合ってるのかと思ってたよ」

「確かに一緒にいること多いし、放課後も二人で過ごしたりしてるけど、私も青磁も、付き合おうとか、そういうことは一切言ってないから。ただ、一緒にいるだけ」


そのことを不満に思っているような口調になっていないか、不安だった。


「ふうん……そうなんだ。でもさあ、めっちゃ仲良いじゃん。茜と青磁が話してるときって、二人の世界って感じで近寄りがたいくらいだよ」


そうか、周りからはそういうふうに見えているんだ。

なんだかくすぐったい。


「ねえ、茜はさ、どう思ってるの?」


沙耶香がプチトマトを飲みこんで、ぐっと顔を近づけてくる。


「どう、って……」

「青磁のこと、どう思ってるの?」

「え……と」


それを口に出すのはさすがに勇気がいる。

言葉につまっていると、彼女はにやりと笑った。


「好きなの? 嫌いなの? どっち?」


喉がからからに渇いていた。


「どっち、って……そりゃ、嫌い、ではないよ」


もごもごと答える。