私の天の邪鬼な返答にも、青磁は気分を害した様子もなく、「正月ボケだろ」とおかしそうに笑った。

ほっと胸を撫で下ろす。


私の前の席の高田くんがまだ来ていないので、青磁はそこに腰を下ろした。


「今日から部活やるよ。お前も来る?」


訊ねられて、即座に頷く。


「うん、行く」

「おう。じゃあ放課後、あっち行くとき声かけるわ」


そのとき高田くんが教室に入ってきて、青磁は「あとでな」と席を立って自分の机に戻っていった。


あーあ、短い会話だったな。

そんなことを考えながら彼の背中を見送っていると、いきなり後ろから誰かに抱きつかれた。


「ラブラブじゃーん!」


振り向くと、満面の笑みを浮かべた沙耶香だった。


「おはよ、沙耶香」

「おっはよ! 朝からごちそうさまでした。いいもの見せてもらっちゃった」

「いや、そういうんじゃ……」


笑みを浮かべて否定するけれど、彼女は「またまたー」と笑って私の背中をばしんと叩いた。


「会話聞こえてたよ。放課後デートの約束してたんでしょ?」


デート、という響きに心臓が跳ねる。

妙に気恥ずかしくて、慌てて首を横に振った。


「違うよー、部活の話だってば」

「ふうん? まだ付き合ってないとか言うわけ?」


デートだとか、付き合っているだとか、青磁と仲良くなりはじめてからよく言われていた。

そのころはたいして気にもならなかったのに、彼への気持ちを自覚してしまってからは、言われるたびに赤面しそうになって慌ててしまう。