先ほどよりもさらに夜色が淡くなった空を見ているうちに、地平線に接するあたりが白さを増してきた。


「もうすぐだ」


青磁が浮き浮きしたように言う。

一瞬たりとも変化を見逃さないようにじっと空の端を見つめながら、私は「うん」と頷いた。


雲は紫がかった青で、雲のない部分は薄い水色。

そのうち地平線が白く光りはじめて、低い雲が黄色に染まる。

高い部分の雲は、淡い薔薇色や青紫色、オレンジ色に輝く。


あらゆる色の競演があまりに豪華で綺麗で、私は息をのんだ。

少し目線を下げると、凪いだ川面に、色鮮やかな朝焼けがそのままに映っていた。


空が二つになったみたいで、言葉にできないほど美しい。


しばらくすると、突然、空全体が鮮やかなオレンジ色に光りはじめた。

どんどん赤みを帯びていき、一瞬、街中が真っ赤に染め上げられる。


「日が昇る直前に、いちばん赤くなるんだよ」


青磁の静かな声が、この世界で唯一私の耳に届く音だった。


「あの雲、見てみろよ。茜色だ」


ひときわ明るい燃えるような赤い雲を指差して、彼がやけに嬉しそうに笑う。


「ああいうの、茜雲って言うらしいぞ。綺麗だな」


私は黙ってうなずいた。


「めちゃくちゃ綺麗だ」


青磁は確かめるように繰り返した。


赤に支配されていた空が、下のほうから急激に明るくなっていく。

直視できないほどの目映さに、目を細めながら地平線を見ていると、とうとう太陽が顔を出した。