いきなり触れられて、心臓が口から飛び出してくるんじゃないか、というほどびっくりした。

そのうえ、


「……お前の髪、柔らけえな」


青磁の指が私の髪を絡めとり、くるくるともてあそびはじめたので、ありえないくらい胸が高鳴る。


ばくばくと鳴る鼓動が自分の中にこだまして、気が遠くなりそうだった。


「……っ、べつに、ふつうだよ」


なんとか答えて、私は無理やり話題を変えるために本に目を落とした。


「それより、茜色って、こんな鮮やかな色なんだね」

「ああ、そうだな」


青磁が私の髪から手を離してくれたのでほっとした。


少しずつ鼓動がおさまるのを感じながら、茜色をじっと見つめる。


それは、真っ赤という言葉がぴったりの色だった。


目を射抜くほどに鮮やかで華やかな赤。

でも、ほのかにオレンジ色も含まれていて、温かい感じもする。


「綺麗な色だけど、私っぽくはないな……」


思わずそう呟いていた。


青磁色は青磁にぴったりだったけれど、茜色は私には似合わない。

地味で根暗な私とは全然違う。


「そんなことねえよ」


私の思考を遮るように彼が突然、語気を強めた。


「お前は、本当はこういう色だろ。今は違う色のふりをしてるけど、本当はもっと、強くて曇りひとつないまっすぐな色をしてるだろ」


急になにを言い出したんだろう、と私は呆然と青磁を見つめ返す。