二人で並んで校門に向かう。


傘を打つ雨垂れの音。

靴先が水溜まりを蹴る、ぴしゃぴしゃという音。

傘の中にこもった、青磁の衣擦れの音。


冷静に考えると、相合い傘をしているという事実に気づいてしまって、急に恥ずかしくなった。


歩くたびに、肩先や腕が触れ合ってしまう。


見ると、すぐ斜め上に青磁の顔がある。

こんなに近くで彼の顔を見たのは初めてだった。


やばい、これはかなり恥ずかしい。

思わず俯くと、青磁がこちらに視線を落とす気配がした。


「おい、茜」

「……なに?」

「なに下向いてんだよ。空を見ろ、俺の描いた空を」


うん、と頷いたけれど、青磁に見られていると思うと、顔をあげられない。

また誰かが身体の中から胸を叩く音がした。


「おい、こら」


すると青磁がしびれを切らしたように、唐突にこちらへ手を伸ばしてきて、私の顎をつかんだ。


「こっち向け」


ぐいっと仰向かせられて、触れ合いそうなほど近くにある青磁の顔。

少し長めの白い髪が、ふわりと私の頬をくすぐる。


突然の出来事に唖然としていると、青磁はにやりと笑って手を離した。

そのまま前を向いて歩き出す。


ぼっ、と音がした気がした。

私の顔から火が出る音だ。