今まででいちばん長い三連休がやっと終わって、うずうずするような気持ちで通学電車に飛び乗った。


休みの間、青磁にメールしてみようかとかなり悩んだけれど、別に訊くべきことも言いたいことも思いつかなくて、結局は携帯とにらめっこをして終わってしまった。


学校の最寄り駅について、改札を出ようと鞄の中の定期券を探していたとき、


「よー」


いきなり、真上から声がした。


驚いて顔をあげて振り向く。

すぐ後ろに立って私を見下ろしていたのは、青磁だった。


彼の姿を認識した瞬間、とんっ、と身体の奥で音がした。

胸の中から誰かがノックをしているような感じだ。


え、と思っていたら、その音は、とんとん、と後に続き始めた。


私は青磁を見上げたまま呆然とする。


「……茜? どうした?」


問いかけてくる怪訝な顔は、思っていたたよりもずっと上にあって、私の鼻先には青磁の胸がある。


青磁ってこんなに背が高かったっけ?


とんとんとん、とノックの音が速くなる。


「……おはよ」


かろうじてそれだけ返して、私は前を向いた。


定期券をかざして改札を通り抜け、出口に向かう。

青磁は当たり前のように後ろについてきた。


同じ学校に行くんだから当たり前、だと分かっているのに、なぜか妙に落ち着かない。