翌日は、早朝からしとしとと雨が降っていた。

もうすぐ十二月を迎える晩秋の雨は冷たくて、傘を持つ指先が冷えきっていた。


そろそろ手袋がいるな、と考えながら、今日は青磁が来るな、とふいに思って、自分でもその脈絡のなさに驚いた。

なんで急にそんなことを思ったんだろう。


内心で首をかしげつつ学校までの道を歩いているうちに、雨がやんだ。

まだ空は雲に覆われているので、一時的にやんだだけだろう。


ぼんやりと空を見ていると、一面灰色だと思っていた雲が、実はさまざまな色合いをしていることに気がついた。

同じ灰色でも、高いところの雲は白っぽく淡い色で、低いところは濃い。

雲の向こうにある太陽の光が当たっている部分は、ほんのりと黄色みを帯いていた。


青磁が見たらきっとすぐに筆をとるだろうな、と思いついて、自然と笑みが洩れる。

視線を落とすと、空き地の草むらから飛び出したすすきの穂先に、たくさんの雨粒がついているのを見つけた。


なんとなく足を止め、手を伸ばして軽く払ってみる。

ぱっと水滴が飛び散って、あの日の光景を思い出した。

青磁が空へ撃ち上げた水の弾丸、降り注ぐ光の滴。