最寄りの駅で降りて、家までは徒歩で十分ちょっと。


その途中のコンビニが見えてくるあたりで、私はマスクを外した。

このコンビニには時々家族が買い物をしにくるから、マスク姿を見られる心配があるのだ。


本当は、外で素顔をさらすのは落ち着かないので、家に着くまで付けたままでいたい。

でも、家族には見られたくないし、知り合いでなければ顔を見られるのも何とか我慢できるから、いつもここで外している。


耳にかかっていたマスクの紐を外すと、じんじんと痛んで半分麻痺したようになっていた耳の付け根が喜んでいるのが分かった。

すっぽりとマスクに覆われていた頬に、突然空気が触れて、ひやりとした肌寒さを感じる。

落ち着かない。


前から歩いてくる人影に気づいて、私は思わず顔を背けた。

たとえ知らない人でも、顔を正面から直視されるのは嫌だった。

何時間もマスクに覆われていた頬は、ふやけてたるんでいるような気がする。


少し大袈裟に首を傾けると、伸ばした髪が顔を隠してくれるから、とりあえずは安心できた。


できれば前髪ももっと伸ばしたいのだけれど、少し伸びてくるとお母さんに『そろそろ美容院に』と言われるから、なかなか思い通りにならないのだ。