「誰からも好かれてるやつも、全員から嫌われてるやつも、生きてることには変わりない。嫌われてようが好かれてようが、人は生きていける。だから、どうだっていいんだよ」


なんてシンプルな論理で彼は生きているのだろう。

思わず唇から笑いが洩れた。


「青磁の場合、人から嫌われてても、自分が自分を好きならいいって感じだもんね」

「あー?」

「青磁ってさ、自分のこと大好きでしょ」


何気なく思ったことをそのまま口にしたけれど、青磁は意外にもすぐには答えなかった。

黙って空を見上げている。

硝子玉の瞳が、綺麗な青空を映す。

気のせいだろうか、少し切なげにも見える横顔。


「……大好き、でもねえけど」

「え……?」

「気に入らねえところもあるよ」


静かな表情で独り言のように呟かれた言葉に、私はなにも返せない。

なんとなく、聞いてはいけない話のような気がした。


「そう。私も」


同じように空を見上げて、やっぱり外せないマスクにそっと触れながら呟く。


足下の校舎からチャイムの音が響いてきた。


「さあ、降りるか」


そう言って立ち上がり、「最後の一発」と水鉄砲を撃ち上げた青磁の顔は、いつもの飄々とした表情に戻っていた。