「だから私も青磁のこと大嫌いになったんだよね」


人に向かって『大嫌い』と面と向かって言うなんて、私には初めてのことだった。

でも、青磁ならきっと私の言いたいことを分かってくれる気がする。


「それまでは、誰かを嫌ったりしちゃいけないって思ってた。けど、青磁だけは駄目だったな。好きになれなかった」

「そりゃそうだろ。嫌いなものは嫌いだろ。それのなにがいけないんだよ」


飄々と青磁は答える。


たぶん私が青磁を嫌っていたのは、こういうところのせいかもしれない。


人から嫌われないように、言いたいことも言わずに我慢して、細心の注意を払って生きていたのに、

青磁は嫌われることなんてこれっぽっちも怖れずに、言いたい放題やりたい放題で生きていて、

それなのに誰からも嫌われていなかった。

むしろ誰からも好かれているように見えた。


そんなところが羨ましくて、そして妬ましかったのだ。


ぴゅう、と音がして、青磁がまた水鉄砲で空を撃つ。

きらめく光の弾丸が青空を彩る。


空は青磁に撃たれて喜んでいるような気がした。

彼が空を心から好きだというこということを、空も分かっているからかもしれない。


「別にさあ」


青磁は手製の水鉄砲を床に置き、私を見る。


「嫌われたっていいじゃん」


彼ならきっと、私の話を聞いて、そう言ってくれる気がしていた。