小学生のころの私は、今とは全く違う性格だった。


通知表にはいつも、『正義感が強い』と書かれていた。

『思ったことはなんでもはっきりと口にする』とも書かれていた。


それが正しいと思っていたから。

言うべきことは言わなきゃいけない、と思っていたから。


だから私はあの日、その子の行動に気がついたとき、すぐに『そんなことしちゃだめだよ』と指摘した。


ある女子が誕生日プレゼントに買ってもらったと自慢していた香りつきの可愛いペンを、

彼女がこっそりと自分の筆箱にしまうのを見つけて、私はみんなの前ですぐに声をあげた。

『ひとのものを盗んだらいけないんだよ』と。


そのときの彼女の顔を、今でも覚えている。

赤くなって、青くなって、白くなって。


みんなの前で罪を暴露されて、クラス中の注目を集めて、この世の終わりを迎えたような絶望の表情をしていた。


その瞬間、しまった、と思ったけれど、私はそれでもまだ自分の正義感に従った。


『早く返しなよ』


そう言いながら、彼女の筆箱から香りつきペンを取り出そうとした途端、彼女に平手で叩かれた。

びっくりして唖然と見つめ返していると、彼女はわっと泣き出して、そのままうずくまってしまった。


どうして私が正しいのに叩かれなきゃいけないの?

なんで叩かれた私じゃなくて叩いた子が泣いてるの?


理解できなくてぼんやりしているうちに、女子たちが集まってきた。