世界の全てをその中に吸い込んだ滴は、お腹いっぱいになったように張り詰めて、私たちに降り注ぐ。


「なんか、すごい」


そう呟いたときには、さっきまでのショックや悔しさや悲しみは、私の心からすっかり抜け落ちていた。


「ははっ、すげえだろ。水って、すごいよな。世界ってすごいよな」


違う。すごいのは青磁だ。

すごいものを見つけられる青磁だ。


みんながなんとなく過ごしているこの世界から、ひととはちがうものを見つけ出すことができる。

すごいよ、青磁。

あんたはやっぱり天才だ。


「あのね」


気がついたら口を開いていた。


「青磁に聞いてほしいことがあるの」


今まで誰にも言えなかった、言いたくなかったこと。

隠してきたこと。


でも、青磁になら話せる。

青磁ならきっと、嘘のない態度で聞いてくれるから。


「おう」


私の真剣さがどれほど伝わっているのか、彼は水鉄砲を空に撃ちながら頷く。


「聞いてやる」


楽しそうに水遊びをする子どもみたいな横顔を見つめながら、私はゆっくりと話し始めた。


昔の話。

でも、私にとっては少しも昔じゃない話。


今でもずっと私を縛りつづけている、思い出したくもない過去の話。


どうしても話したくなったのだ。

今、青磁に。