「はあ……」


涙の余韻に浸りながら、ぼんやりと窓の外に目を向ける。


授業をさぼってしまった。

真面目な優等生の私が。

きっとクラスのみんなも先生もびっくりしているだろう。

でも、体調不良ということになっているなら大丈夫か。


授業を脱け出すなんて、数ヵ月前の私なら、青磁と出会う前の私なら、考えられないことだった。

熱があっても無理やり学校に来るほど、欠席も遅刻も絶対にしたくなかったのに。


今は、『別に授業をさぼって叱られても、死ぬわけじゃないし』なんてことを思っている。


窓硝子を透かして燦々と降り注ぐ真昼の光。

美術室に来るのは放課後はがりだったから、昼間にはこんなに明るく陽が射し込むのだということを知らなかった。


四角い窓枠に切り取られた光が、放射状にこちらへ広がっている。

ふわふわと漂っている細かい塵や埃がその光の中に入ると、まるで空気中にダイヤモンドの粉が撒き散らされたようにきらきらと輝いた。

ふっと息を吐くと、光る粉がゆっくりと動いて空気に模様を作る。


綺麗だなあ、と思いながら見ていたら、しばらくして青磁が「よし」と声をあげた。


「できた。行くぞ」

「え? なにが? どこに?」

「それは後からのお楽しみだ。屋上に行くぞ」


戸惑う私をよそに、青磁はなにやら加工をすませたペットボトルに水を入れて美術室を出た。