教室を出て、誰もいない――青磁しかいない廊下を目にした瞬間、涙がどっと溢れた。


目が壊れたんじゃないかと思うくらい、ぼろぼろと流れて流れて、とまらない。

ううう、と変な声が喉から洩れる。


青磁は振り向かずに、なにも言わずに、ただ私の手を引いて前に前に歩いていく。

その背中を見ていたら、さらに涙がこみあげてきた。


なんで泣いてるのかな私、と泣きながら思う。

悪口を言われたのが悲しいから?


ちがう、それだけじゃない。

自分に向けられた冗談半分の悪意に、動けなくなるほどのショックを受けてしまった自分の心の弱さが情けなかったのだ。


どうして私はこうなんだろう。

人とうまく付き合えなくて、なにかあるたびにショックを受けて傷つく、弱い自分が嫌だった。

マスクをつけて気持ちを隠して、予防線を張らずにはいられない自分が嫌だった。


「……もう嫌だ~……」


旧館に入ったことが分かると、私はとうとう耐えきれなくなって情けない声をあげた。


青磁は「そうか」と少し振り向いて、それからまた前を向く。

美術室の前にたどり着くと迷いなくドアを開けた。


もし美術の授業中だったらどうするんだ、と一瞬頭をよぎったけれど、青磁はかまわずにどんどん中へ入っていく。

とりあえずは授業はないようで少し安心した。