だめだ。
こんなところで泣いたら終わりだ。
誰に見られるか分からない。
マスクの中で唇をぐっと噛み、細く息を吐き出して、なんとかこらえる。
ちょうどそのとき、チャイムが鳴った。
予鈴だ。もうすぐ五時間目が始まる。
「……本当に、なんでもないから。平気」
顔を俯けたまま青磁に告げて、返事を聞く前に走って教室へ戻る。
俯いていれば、前髪とマスクで表情なんて見えない。
だから大丈夫だ。
このまま授業を受けることができるはず。
それなのに、どうしてだろう。
教室に入った瞬間、四方八方から飛んできた視線が全身に突き刺さったような感覚がした。
足がすくんで動けなくなる。
ひそひそと話をしているクラスメイトたち全員が、私の悪口を言っているんじゃないか。
そんなわけがない、と自分を説得しようとするけれど、ないって言い切れるの? と別の自分がほくそ笑む。
そう、分からない。
みんなが私をどう思っているかなんて、私に直接向ける態度や言葉から本当のことが分かるわけがない。
裏で私のことを疎ましく思っている人が何人いるか、分からない。
考えれば考えるほど、全身の血の気が引いて、指先が冷えきって足も自分のものじゃないみたいに硬直して、教室の入り口で私はひとり佇む。
こんなところで泣いたら終わりだ。
誰に見られるか分からない。
マスクの中で唇をぐっと噛み、細く息を吐き出して、なんとかこらえる。
ちょうどそのとき、チャイムが鳴った。
予鈴だ。もうすぐ五時間目が始まる。
「……本当に、なんでもないから。平気」
顔を俯けたまま青磁に告げて、返事を聞く前に走って教室へ戻る。
俯いていれば、前髪とマスクで表情なんて見えない。
だから大丈夫だ。
このまま授業を受けることができるはず。
それなのに、どうしてだろう。
教室に入った瞬間、四方八方から飛んできた視線が全身に突き刺さったような感覚がした。
足がすくんで動けなくなる。
ひそひそと話をしているクラスメイトたち全員が、私の悪口を言っているんじゃないか。
そんなわけがない、と自分を説得しようとするけれど、ないって言い切れるの? と別の自分がほくそ笑む。
そう、分からない。
みんなが私をどう思っているかなんて、私に直接向ける態度や言葉から本当のことが分かるわけがない。
裏で私のことを疎ましく思っている人が何人いるか、分からない。
考えれば考えるほど、全身の血の気が引いて、指先が冷えきって足も自分のものじゃないみたいに硬直して、教室の入り口で私はひとり佇む。