「そういえば真夏もマスクしてたね」

「してた、してた。風邪かなと思ってたけど、そんなわけないもんね」

「ないない。なんかさ、この前ちらっと見たけど、体育のときもご飯のときもマスクしたままだったよ」

「うそ、まじで? 完全に依存症じゃん」

「やばいね、いっちゃってるよね」

「明るそうに見えて、実はけっこう病んでるんじゃない?」

「ぽい、ぽい。家とかだとめっちゃ暗そう」

「あー、言われてみればそんな感じもするな」

「実は根暗で腹黒っぽい」

「それ最低じゃん!」

「あはは、ちょっとうちら悪口言いすぎじゃない?」

「やー……だって、ほら、青磁くんって目立つじゃん。かっこいいし才能あるし、青磁くんのこと好きな子多いじゃん。なのになんであの子? ってなるよね、実際」


それはなんとなく私も感じていた。


青磁は良くも悪くも人目を引く。

容姿も振る舞いも、とにかく目立つ。


そして、そういう派手さに惹かれる女の子も多いらしい。

青磁とよく話すようになってから、女子からの露骨な視線を感じることが多くなっていた。


でも、ただの興味や好奇心だろうと思って、あえて気にしないようにしていたのに。


やっぱり、私は疎まれている。

あんなに頑張ってきたのに、やっぱり嫌われてしまった。

また失敗してしまったのだ。


そのことを思い知らされて、殴られたような衝撃を覚えた。


頭の中で巨大な鐘でも打ち鳴らされたような、ごんごんという音がする。

ぜえぜえと呼吸が荒くなっていく。