「一瞬たりとも目、離すんじゃねえぞ」


青磁の言葉に、うん、と頷き、私は目を見開いて西の空を凝視する。


太陽が地平線に沈んでいく。

それにつれて黄色みを帯びたオレンジ色がどんどん強さを失っていき、薄緑や水色もどんどん淡くなっていく。

そして頭上の青が濃くなっていく。


暖色が消えて、寒色が強くなる。

雲が濃い青紫に染まる。


ああ、このままどんどん空が暗くなって、夜闇が訪れるんだな。


そう思った、そのときだった。


太陽が姿を消した地平線のあたりが、突然、鮮やかなオレンジ色に輝き始めた。


私は瞬きすら忘れて、呆然とその変貌を見つめる。


日が沈みきって一度は暗くなった空の端が、さっきまでのオレンジ色とはくらべものにならないほどに鮮烈な、赤みの強いオレンジ色に染まっていく。

空が燃えて、街も燃えて、世界が燃える。


「……すごい」


ゆっくりと首を巡らせて、隣の青磁を見る。

彼の真っ白な髪は、今は夕焼けと同じ色に染まっていた。


「すごいね」

「すごいだろ」


青磁はやっぱり自分のことのように自慢げに笑った。


私も少し笑って、また夕焼けを見る。

太陽は、この世界から消える最後の最後に、一瞬だけ、燃え上がる炎のような色を私たちに見せつけて、静かに姿を隠した。