本当だ。

沈みかけの太陽が放射線状に放つ最後の光は、見たこともないくらい強烈だった。


「ほら。夕焼けは何色だ?」


青磁がくすりと笑う。

私は目を細めて、空を見る。


明るすぎる太陽の周りは、一言では言い表せない複雑な色をしていた。


鮮やかな薔薇色、淡い薄紅色、目を見張るような橙色、わずかに赤みを帯びた黄色、薄い黄緑、透き通った水色。

太陽から遠ざかるにつれて空は濃さを増していき、東のほうはすでに、紺色がかった夜に近い青だ。

美しいグラデーション。

目の前に広がる果てしない空に、あらゆる色が混じりあっている。


そして、色の洪水のような空に浮かんだいくつかの雲は、影になって灰青色に沈み、夕陽が当たる縁の部分は、紫がかった薄紅色に染まっていた。


あまりの美しさに息を呑む。

夕暮れの空は、こんなにも綺麗だったんだ。

十七年も生きてきて、まったく気づかなかった。


違う、知ろうとしていなかったんだ。

夕焼けはオレンジ色、と確かめもしないのに思い込んでいた。


私はそうやって、今までにたくさんの真実を見落としてきたのだろう。

青磁に出会わなければ、見落としていることにさえ気づかないまま、これからも生きていったのだろう。


「……綺麗。ほんとに綺麗」


独り言のように呟くと、青磁は「まだだぞ」と空を見ながら言った。


「夕焼けの色はどんどん変わっていくんだから」