「……本当は、お母さんにも感謝してる。仕事もあるのに毎日お弁当作ってくれるし。お母さんありがとー! 手伝えることは手伝うからね!!」

「なんだ、結局手伝うのか」

「玲奈、可愛いから癒されるよ、ありがとう! 大好き!お兄ちゃんは……うん、お兄ちゃんはもう少し頑張れー!」


青磁がまた噴き出した。


「あー、うける」


目に涙を浮かべながら肩を震わせて笑う青磁を見ていると、なんだかこっちまでおかしくなってきた。


「ふふっ」


声が洩れる。

すると抑えられなくなって、とうとう私は声をあげて笑い出した。


青磁が笑いながら屋上に転がったので、私も同じように寝転がる。

視界には空しかない。


妙に晴れやかな気持ちだった。

こんな爽やかな気分になったのはいつぶりだろう。


悔しいけれど、青磁のおかげだ。


ちらりと視線を投げると、青磁もこちらを見た。


前は苦手だった硝子玉の瞳。

今は素直に綺麗だと思える。


「マスク、外せば?」


さりげない感じで言われたけれど、「それは無理」と即答する。


「あ? なんでだよ。あんだけ言いたい放題言えたんだから、マスクも外せるだろ」

「それとこれとは話が別」

「一緒だろ」

「違うの、私にとっては!」


マスクを外すというのは、やっぱり考えられない。

これはもう私の一部だから。

マスクを付けていない顔は、誰にも見られたくない。


その思いは少しも変わっていなかった。