「茜。言いたいことあるなら言っていいんだ。相手が誰だろうと、むかつくならむかつくって叫べ。俺が聞いててやる」


あんたなんかに聞いてもらったって、何にもならない。

それに、言っちゃいけないことは言っちゃいけないんだ。


そう頭では思った。

思ったのに、どうしてだろう。


青磁の澄みきった眼差しに包まれた私は、気がついたら口を開いていた。


「……みんな、むかつく。私にばっかり何でも押しつけて……!」


ああ、とうとう言ってしまった。

ずっと、ずっと、我慢していたのに。


「クラスのみんなも、先生も、むかつく! 文句ばっかり、要求ばっかり言ってきて、なんにも協力してくれない、助けてくれない!!」


とうとう心の鍵を開けてしまった。

青磁にこじ開けられてしまった。


いや、違う。

自分で開けたんだ。

きっと、私はずっと、この鍵を開けてしまいたかった。

それなのに開けられずに、溢れそうな激情を必死に抑え込んでいて、でも抑えきれなくなっていた。

だから壊れる寸前だった。


それを、青磁が手助けしてくれたのだ。

鍵を開いて、心を解放するきっかけをくれた。


「言えるじゃないか」


私の心の固い鍵をいとも簡単にこじ開けてしまった張本人が、満足げに笑いながら私を見ていた。


「もっとあるんだろ? 言え、言っちまえ」