「だから、言いたいことは言え。今まで溜めこんできたこと、全部、吐き出せ。ほら、今すぐ」


そんなことをいきなり言われても、できるわけがない。

私は動けず、声も出せずにいる。


眉をひそめて私を見下ろしていた青磁が、血の跡が残る私の指先に視線を移して、それからまた私の顔を見た。

硝子玉の瞳が静かに私を見つめる。


その視線が少しずつ降りてきて、マスクの上に止まったのが分かった。


「……外せよ」


険しい面持ちで青磁が言う。


「マスク、外せよ」


反射的にマスクを両手で押さえて、ふるふると首を横に振った。

青磁の顔がさらに厳しくなる。


ちっ、と舌打ちをして、マスクを押さえている手を外そうとするので、私は慌てて後ずさった。


「やめて、これだけは無理」

「ああ? なんでだよ」

「なんででも。とにかく、無理」


私にとっては、マスクを外されることは、無理やり服を脱がされることと同じようなものだ。

こんなところでマスクを外して素顔をさらすなんて、絶対に無理だ。


「四六時中そんなもんつけたまま、顔隠しやがって。薄気味悪いんだよ!」


青磁が「気持ちが悪い」と繰り返す。


腹が立った。

人の気も知らないで。


私だって、好きでマスクをつけているわけじゃない。

好きでマスクを外せなくなったわけじゃない。


「……あんたのせいでしょ」


思わず呟いた。