思いきり腕を引いたけれど、振り払えなかった。


「言えよ。言いたいことがあるなら、自分の口でちゃんと言え」


命じるように高らかに、青磁が言う。

あまりに偉そうなので、素直に従う気になどなれない。


黙って見つめ返していると、なぜか、青磁の顔が悲しそうに歪んだ。


「時間は……人生は、永遠じゃないんだぞ」


風が吹いて、二人の間をすり抜けていく。

青磁の髪とシャツの裾がさらりと揺れた。


「時間はいつまでも続いてるわけじゃない。人生にはいつか必ず終わりがくる。それなのに、お前はそうやって無駄にするのか」


私の手首をつかむ青磁の手に力がこもる。


「限りある時間なのに、終わりのある人生なのに、お前は自分を押し殺して、黙って耐えて我慢しながら過ごすのか」


心臓をわしづかみにされたような気がした。

そんなふうに考えたことはなかった。


私は時間を、人生を、無駄にしているのだろうか。

無駄にしてきたのだろうか。


分からない。

意味があるとは思えなかったけれど、無駄だとも思えなかった。

それでも。


「俺たちの時間は、永遠にあるわけじゃない」


噛み締めるように言った青磁の言葉が、耳に染みついて離れない。