それが照れ隠しでも冗談でもなく本気だというのが声音で伝わってきて、私は驚きで一瞬、動きが止まってしまった。

顔に浮かべていたはずの微笑みが消えてしまっていることに気がついて、慌てて笑顔をつくる。


「それはそうだけど、みんなは青磁がいいって」

「うぜえ、黙れよ」


きつい口調で遮られた。

私は何も言えなくなり、なんとか笑みだけは崩さずに青磁を見つめ返す。

青磁はいらいらしたように、銀色の髪をかきむしった。


「ふざけんな。なんだよ、みんなが言うからって。みんなってなんだよ、それが何なんだよ」


苛立ちがこみあげる。

なに、その言い方。

こいつは、ちょっとくらいみんなに合わせることができないのだろうか。


張り詰めた空気でクラスがしいんと静かになる。

みんなの視線が私と青磁の間を行き来するのを感じた。


「……あはは」


なんとか笑い声を上げることができた。


「ごめんごめん。確かに、私の言い方が悪かったよね」


空気を和らげるために言ったのに、青磁は「うるせえって」と声を荒げる。


「黙れよ。ご機嫌とりなんかすんじゃねえ、胸くそ悪い」


きっぱりと言い切って、彼はすっと横を向いた。

それきり、ちらりともこちらを見ない。


私は少し俯いて息を吐き、それから顔を上げた。


「……ってことで。青磁は乗り気じゃないみたいだから、他に誰かいない?」


何事もなかったように言うと、みんながまた元のように周囲と会話し始める。


そのうち、元気のいいグループの中心の男子が周りに言われて王子役を買って出てくれて、なんとか役決めを終えることができた。