何それ、と笑ってしまおうとして、でもうまくいかなかった。


破天荒すぎるように思える青磁の言葉だけれど、胸に深く刺さって、じわじわと私の中に広がっていく。


私も青磁と同じように屋上のふちに立って、眼下に広がる景色を眺めた。


一面の青空は、端にいくと少し色が薄くなり、西のほうは僅かに淡い黄色みを帯びていた。


学校のグラウンド。

校門の前の並木道。

車通りの多い国道。

網の目のように広がる細い生活道路。

その間を埋め尽くすたくさんの家々。

そこに暮らしている無数の人たち。

少し離れた街にある、林のように建ち並ぶ高層ビル群。


この世界は、私のもの。


そんなふうに考えたことなど一度もなかった。


でも、自分のものだと思って眺めていると、ひどく愛おしく思えてくるから不思議だ。


そうか、と妙に納得した。


だから青磁の絵はあんなに綺麗なんだ。

自分の世界だと思って見つめているから、綺麗なものがたくさん見つけられるんだ。


隣に立つ青磁は、やっぱり微笑みながら空を仰いでいる。

硝子玉の瞳に、今は真っ青な空が映っていた。


世界に対する愛に満ちた眼差し。

だから、青磁の目を通して見た世界は、あんなにも美しい。


青磁の隣で世界を見つめていると、曇っていた私の目にも、美しい世界が見えるような気がした。