「ほー、じゃあ登ってみろよ」


青磁がからからと笑いながら、からかうように言った。


むかつく。

いっつもひとのこと馬鹿にして。


その苛立ちを力に変えて、私はロープを頼りに校舎の壁を登り始めた。


「さっさと来いよ」


上から声が降ってくる。

見上げると、いつの間にか登りきった青磁が私を見下ろしていた。


太陽を背負った彼の姿は、眩しくて直視できない。


「早くここまで来い。俺に追いつけ」


仁王立ちになって腕組みをしながら、青磁は偉そうに言った。


追いつけ、と豪語できる彼が、眩しかった。


「追いつくわよ、すぐに」


憎まれ口を叩きながらなんとか登りきったけれど、そこからどうすればいいか分からなくなってしまった。

すると青磁が「仕方ねえな」と呟いて、ロープにぶらさがる私の腕を両手でつかんだ。


「引っ張りあげるぞ、落ちるなよ」


私が返事をする前に、青磁は全身に力を込めて私の身体を引っ張り上げた。


一瞬、宙に浮いたような気がした。


ほっそりとして見える青磁だけれど、意外と力があるんだな、と場違いなことを頭の片隅で思う。


そして、気がついたら私は、屋上に座り込んでいた。


「あー、重かった」


青磁が肩を回しながらそんなことを言ったので、私は「うるさい馬鹿」と彼の肩を叩く。