何を言っているんだろう、と首を傾げた私の手をぐいっと引っ張り、青磁が私を窓の上に引き上げる。


「きゃ、ちょっ、危な……っ」


反射的に声をあげて、横の壁に手をつく。


その拍子に、窓の下が視界に入ってしまった。

はるか下に見える地面。

本能的な恐怖で鳥肌が立った。


でも、青磁は私の混乱などどこ吹く風で、にやにやしながら私を見ている。


「ほら、これつかめ」


笑いながら青磁が差し出してきたのは、ロープだった。

上のほうから垂れ下がっている。


どこからきたロープかも分からなかったけれど、目の前にあるそれにすがるようにつかまった。


「よし、登るぞ」


は? と聞き返す暇もなく、青磁がロープに飛びついてするすると上に登り始める。


呆然と見上げていると、彼は視線をこちらに落として、くっと口角を上げた。


「なんだ、怖いのか。いつも生意気言ってるくせに、口ばっかりかよ」


かちんときて睨み返す。


「登れるわよ、これくらい」


負けじと言い返してしまってから、少し後悔した。

高所恐怖症というわけではないけれど、三階の高さで命綱もなしにロープを登るというのは、思った以上に勇気がいった。