クラスのみんなの顔を見渡してみるけれど、誰も『演ってみようかな』といった表情はしていないようだった。


「誰かいない? 他の子を推薦してくれてもいいんだけど」


すると、何人かがちらちらと視線を青磁に送り始めた。


「王子は青磁がいいんじゃね?」


男子の一人が声をあげると、周りも頷いた。


「だよね。うちのクラスでいちばん王子っぽい顔してるもん」

「あー、王子様の格好、似合いそう!」


なんとなく認めたくないけれど、たしかに青磁は色白で整った顔立ちをしていて、王子の役にはまりそうだ。

他にもイケメンだと騒がれている男子がいるけれど、彼らはたいてい運動部で、日に焼けて真っ黒な肌をしていたので、あまりイメージには合わない。


「お姫様は友里亜だよね、やっぱり」

「だよな」


友里亜というのは、ふわふわの髪に甘い笑顔の、誰が見ても可愛らしい女の子だ。

やってくれる? と友里亜に聞くと、少し困ったように恥ずかしそうに笑いながら、それでも「うん」と答えてくれた。


「じゃあ、青磁」


私は大嫌いな名前を口にして、窓際の席に目を向けた。

頬杖をついて窓の外の空を見ていた青磁が、険しい表情で振り向いた。


「……なんだよ?」

「聞こえてたでしょ。王子の役は青磁がいいってみんなが言ってるんだけど、どう? やってくれる?」


もちろん承諾してくれるものだと思っていた。

クラスの行事だし、みんなからの推薦なのだから。


でも、青磁は眉をきつく寄せて、「はあ?」と首を傾げた。


「いやだよ、なんで俺が。誰か他のやつにしろよ」