蒼ちゃんが右の手首にブレスレットを着けて、太陽に透かすように高く上げた。


「ありがとう、真緒。大事にするよ」


屈託なく、笑う。
この笑顔を曇らせるようなことが、この先もあってはいけないとわたしは思う。


  * * *


その日の夜は、おじいちゃんもお母さんも留守だった。

冷蔵庫にひき肉があったからハンバーグを作って、付け合わせにブロッコリーをゆでて食べた。

あ、そういえば。と思い出したのは、あまったハンバーグにラップをかけていたときだった。

たしか昨日から蒼ちゃんちのおじさんが九州出張で、しばらく家には蒼ちゃんしかいないとおばさんが言っていた。

つまり、男子高校生のひとり暮らし。
食事バランスなんかあっという間に崩壊するだろう。