「あの、蒼ちゃんは」

「出かけてるみたいね」


それを聞いて、わたしは少し残念に感じた。
同時に、少なからず安堵もしていた。

どんな顔をして彼に会えばいいのかわからないから。

みずみずしいスイカを口に運びながら、わたしは壁に飾られた家族写真に目をとめた。

……中学時代の蒼ちゃんだろうか。

今とは正反対の日焼けした顔。
胸の前で誇らしげに両手で持っているのは、地区大会優勝と書かれたトロフィーだ。

そして蒼ちゃんの両隣には、ご両親も笑顔で写っている。

血縁上は実の親子じゃなくても、たっぷりの愛情を彼が受けていることは写真からも明らかだった。


「真緒ちゃん?」


写真を凝視するわたしを不思議に思ったのか、おばさんが窺うように声をかけてきた。