「あれはどこだ」
前置きもなく唐突に問われた。
恐ろしく冷淡な声。
まるで、あかの他人が蒼ちゃんの声帯を使って話しているみたいに。
「“あれ”……?」
と聞き返したものの、すぐにあの手紙のことだと気づく。
もしかしてあれを探すために、わたしの机をあさっていたのだろうか。
「お前が持ってんだろ。早くよこせ」
彼の拳がわたしの顔の横の壁を叩き、びくっと肩が跳ねた。
わたしは言われるがまま鞄から手紙を取り出した。小刻みに手が震えて、冷や汗が背骨を這うように伝っていく。
おそるおそる差し出すと、蒼ちゃんはそれを左手で引ったくった。
「中は?」
「よ、読んでないっ……ほんとだよ!」
必死に潔白を主張するわたしを、蒼ちゃんは見下すように鼻で笑う。