わたしは邪な考えを払うように頭を振って、手紙をカバンにしまった。

そして代わりにスマホを取り出そうとして、そこにあるはずのスマホが見当たらないことに気づいた。


「あれ? なんで?」


ポケットも確認してみたものの、やっぱりない。図書室では一切触っていないから、おそらく教室に忘れてきてしまったのだ。

わたしはため息をつき、足早に学校へと戻った。


   * * *


下校時刻をとっくに過ぎた校舎の中は、ほとんど人影がなかった。

やたら反響する自分の足音と、窓の外から聞こえる物悲し気な虫の声。

廊下の手洗い場の蛇口から、ぽとん、ぽとんと水が一滴ずつ垂れている。

人のいない学校って、なんとなく不気味だ。
さっさと用をすませたくて、無意識に歩く速度が速くなる。

一直線の廊下を進むと、“2-A”と札のかかった教室にたどり着いた。