「蒼の母親が残した手紙には、萩尾さんが蒼たちを捨てて、見合い相手との間に子どもを作ったって書いてただろ?
でもそれは福田のぶえが仕組んだ嘘。
その時点では見合いをすることすら拒んでいたし、今も萩尾さんの子どもは蒼以外いないよ」


どうやら昨日から凪さんが調べていたのは、このことだったらしい。

萩尾さんがホタルを抱きしめる腕をゆるめ、話を引き継いだ。


「香澄と蒼との親子3人で暮らすことは、私の夢でした。
だけどある日、急に彼女と連絡がとれなくなったんです。
私の親戚から手切れ金を受け取る代わりに身を引いたのだと、福田に教えられました。
……今となれば、どうしてあんな嘘を信じてしまったんだろうと後悔しかない」


萩尾さんは懺悔のような口調ですべてを話してくれた。

当時の萩尾さんは、自分のせいで彼女を未婚の母にしていた負い目もあり、泣く泣く別れを受け入れたらしい。

そしてそんな萩尾さんを、福田のぶえは献身的に励まし続けた。

ふたりの仲を引き裂いた張本人だとは知る由もなく、萩尾さんは福田のぶえに全幅の信頼を寄せていったのだ。