ホタルという存在のあまりの不確かさに、足元が崩れるような怖さを感じた。

必死に彼の姿を探そうと、蒼ちゃんの瞳の奥を見つめていると、

「真緒」

静かな力のこもった声で蒼ちゃんが言った。


「もうあいつとは関わらない方がいい」

「え?」

「これ以上は危険だ。俺の父親を探すのは、単なる人探しとはワケが違うんだよ。現に今日も変な男につけられただろ。ホタルのそばにいたらこれからも――」

「でもっ、蒼ちゃん」


わたしはすがりつくように声を被せた。


「蒼ちゃんは実のお父さんに会いたくないの?」

「………」

「ホタルは会いたがってるよ、お父さんを探すことが自分の存在理由だって。わたし、ホタルに協力してあげたいっ」

「だから! そのホタルが危険なんだよ!」


苛立ちを含んだ怒声に、びくっと硬直して口をつぐむ。

わたしの反応に蒼ちゃんは気まずさを滲ませながらも、きつく唇を噛んで言葉を続けた。


「真緒は、何もわかってないんだ」