それからの俺は、ごく普通の明るい少年に成長していった。たくさんの友達に恵まれ、近所に住む凪兄ちゃんにも可愛がってもらった。
中学では、水泳部に入った。
『以前の蒼は、ホタルの影響で泳げなかったもんな。しっかり病気を治して本当によかった』
養父はそう言って、俺が水泳部で活躍するのを喜んでくれた。俺はめきめきと記録を伸ばし、高校でもエースとして活躍した。
……だけど。幸せな日々を過ごせば過ごすほど、時々ふと怖くなることがあった。
ホタルはまだ俺の中にいる。
本来なら俺が味わうはずだった絶望を背負ったまま、閉じ込められている。
なのに俺だけが幸せに過ごしていていいんだろうか。
その罪悪感はけっして消えることはなかった。
さて、ここまで話を聞いた君は、たぶん疑問に思っているだろう。
眠ったままのホタルはいつ目を覚ましたの?って。