青山先生は笑いジワの印象的な、おちゃめで優しい人だった。
モモたち交代人格も、青山先生の言うことなら素直に聞くことができた。
カウンセリング時には、先生が交代人格をひとりずつ呼び出して会話をする。俺はそれを後ろから見ている、という感じだった。
そうして俺は、モモたちが実在する人間ではないことを、子どもなりに少しずつ理解していった。
何度目かのカウンセリングの日。衝撃的な事実を、俺たちは知ることとなった。
『ところで、プールの授業で暴れたのは誰かわかるかな』
交代人格の中でも一番のしっかり者・フブキに、先生が尋ねた。
フブキは何秒間も黙りこみ、やがて言いづらそうに口を開いた。
『……ホタルだよ』
『ホタル? それは、交代人格の名前?』
フブキが小さくうなずいた。