それからも、続けて不可解なことが起きた。

学校で暴れたのはあの一度きりだったけど、ひとりでいるときには度々記憶が飛んだ。

知らない間に爪で掻きむしったのか、左手の傷あとの部分が血まみれになっていたこともある。


心配した養母に連れられ、都内の総合病院を受診した。

いくつもの科を移動し、いろんな医師に話を聞かれ、何度目かの診察でようやくついた病名は“解離性同一性障害”という長ったらしいものだった。


『つまりこの子は……多重人格ということですか?』

『その可能性が高いと思います』


青ざめた養母とどこか歯切れの悪い医師が、俺の横でそんな話をしていた。

たじゅうじんかく。初めて聞く言葉。

そうか、俺は病気なのか。なぜか妙に納得した気持ちでふたりの会話に耳を傾けた。