天気は荒れ模様。けれどそんなの気にならないほど気分は晴れ渡り、俺は母のブルーのワンピースに自分の傘が当たらないよう、雨に濡れるのも気にせずに傘を反対側に傾けて歩いていた。
『これからは一緒にいられるの?』
無邪気にそう尋ねると、
『そうね。ずっと一緒』
母は前を向いたまま答えた。
到着したのは海だった。切り立った崖のむこうに、荒れ狂う海原が見えた。
なぜこんなところに? なんて俺は考えもしなかったよ。
母が連れて行ってくれる場所ならどこでも嬉しかったし、子どもにとっては、親から与えられるものがすべてだったから。
そして『ずっと一緒』という母の言葉を、そのまま無邪気に受け止めていたから。
崖の先端の方へと、母が歩いていく。
俺の手を握ったまま、ゆっくり、ゆっくりと。
穏やかささえ感じさせる静かな横顔が、息をのむほどキレイで――