でも俺は、一度も会ったことのない父の死より、母の変わりようの方がずっと辛かった。

日に日に痩せ細り、口数も少なくなってしまった母。

そしてそんな母に何もしてあげられない、役立たずな自分が歯がゆかった。


今なら少しは理解できる。
ああいう状況の中では、子どもの存在は支えにもなり、重荷にもなるんだってことを。

そして残念ながら俺の母の場合、後者の比重が少しばかり大きかったんだと思う。



母の両親はすでに他界していたので、俺は遠い親戚の家に預けられることになった。

寂しかったけど、入退院を繰り返す母の体調を考えると文句は言えなかった。


親戚と言ってもそれまで会ったことすらなく、俺は完全に招かれざる存在だった。

そして、俺の生活はそこで一変してしまった。