子どもの頃、俺には3人の友達がいた。
いや、友達というよりも、兄弟と呼んだ方が近いかもしれない。
わがままで手のかかる末っ子みたいなモモ。
泣き虫で弟的存在のミノル。
兄のようにみんなをまとめてくれたフブキ。
そう、言わなくても君はわかっているだろうけど、彼らはみんな実在しない人――
俺が作り出した交代人格だったんだ。
まずは彼らが生まれる前のことから話そう。
俺は物心ついた頃から、都内のマンションで母親とふたり暮らしだった。
父親に会ったことはなく、仕事で遠いところにいるのだと聞かされていた。
寂しくはなかった。大好きな母がそばにいれば充分だった。
お風呂で母が歌ってくれた鼻歌。一緒に布団に入るときの匂いや温もり。
そういったささやかな日常を、俺は子ども心に愛していた。
そんな生活が一転したのは6歳のとき。
見たこともないような暗い顔をした母から、父が死んだと聞かされたんだ。