その騒がしさで現実に引き戻されたわたしは、なんだか急に恥ずかしくなってホタルに声をかけた。


「ありがとう。もう大丈夫だから、ここで下ろして」


ホタルの腕から力が抜けたのは、それを言い終わるより前だった。

急に投げ出されたような形で、わたしはバランスを崩しながら地面に降りた。
どうにか立ったものの、挫いた足首に体重がかかる。

が、痛みがさほど気にならなかったのは、目の前で異変が起きたからだった。


「ホタル……?」


後ろ姿でもはっきりとわかるほど、ホタルの肩が激しく上下していた。

荒く、不規則な呼吸の音。小刻みに震える体。


「どうしたの!?」


彼の腕をつかんで顔をのぞきこんだわたしは、驚愕した。

両目が限界まで見開かれ、唇は色を失っている。明らかに尋常ではない様子に戦慄が走った。


「ホタルっ、ゆっくり呼吸して」