「ホタル……」
ヒュウゥゥ、と笛のような音が頭上を昇っていく。
みんなが一斉に空を見上げる中、わたしたちの視線だけが、地上で重なった。
「ん?」
ふり返った彼の、橙色に照らされた笑顔。
その瞳の中で咲いた大輪の花。
鮮やかに夜空を彩る光が、痛いくらい胸を焼き焦がして――
「ホタル……ずっと」
――消えないで。
その言葉に被さるように、どんっ、と重低音が上空から響いた。
周囲から、わっと歓声が上がる。火の粉がぱちぱちと夜空を散り落ちる。
わたしの小さな声はきっとホタルの耳に届かなくて。だけど彼は何かを受け取ったみたいに、ゆっくり瞬きをすると前に向き直った。
次々に花火が打ち上がる中、ホタルが再び歩き出した。