「何だ、お前。そんなとこに突っ立って」
怪訝そうに見下ろしてくるホタル。
わたしは気を引き締め、本題を切り出した。
「川口先生から連絡があったの。水原香澄さんと接点のあった人が見つかったって」
電話で聞いた話をそのまま伝えている間、ホタルは顔色ひとつ変えずに聞いていた。
報告が終わると、彼は窓に手をやりながら事務的に言った。
「わかった。日程はお前にまかせる」
「あっ……」
閉まりかけた窓を見て、思わず声を出してしまう。
手を止めたホタルが、何?という視線をよこした。
「………」
言葉がさまよって、出てこない。
いや、そもそも何かを言いたかったわけじゃないのだ。
なのになぜ引き留めてしまったんだろう。
まるで、もっとホタルと話していたい、みたいな……。