それともおばさんが言っていたように、あえて目をそらしているんだろうか。
ショックで心が壊れてしまわないよう、自己防衛のために……。
それが正しいことなのか、わたしにはわからない。
けれどそれが彼にとって必要なことだというのは、なんとなくわかる。
ねえ、蒼ちゃん。
あなたの中には、今もまたホタルがいるよ。
そして、蒼ちゃんの本当のお父さんを探しているんだよ――。
* * *
「起きろ」
いつの間にかわたしも眠っていたらしい。体の右半分に感じる心地よい温もりに身をゆだねていたら、突然、声が飛びこんできた。
のろのろと開けた視界に、段ボールだらけの光景が斜めに映る。
……あれ? なんでこの部屋、こんなに傾いているんだろう?
と寝ぼけた頭で考えたわたしは、すぐに状況を理解した。
斜めなのは部屋じゃなくて、わたしの体だ。
あろうことか、蒼ちゃんに寄りかかって眠っていたのだ。
「ご、ごめん、蒼ちゃん!」
一気に覚醒して体を離す。ところが。
「え……ホタル?」
そこにいたのは蒼ちゃんではなく、眉間にしわを寄せたホタルだった。